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管理人がある日突然、乳がん宣告受けました。 でも、笑って治すわよ!!

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夕方。もうすっかり空は暗くて、灯りをつけなければ見えないほどの時間帯。ベランダで洗濯物を取り込んでいると、決まってその時間、となりのゆうくんが一人でブロック塀に向かって、野球のボールを当ててキャッチの練習をしている。ゆうくんは今二年生。三人姉弟の末っ子だ。隣同士、昔から行き来はあるものの、子供が成長した今はほとんど話もしなくなった。たまに「おかえり」や「おはよう」と声をかけると、体裁悪いような、気恥ずかしいような声が返って来る。
そんなゆうくんが今年から野球を始めた。パパは元野球少年。そして今も相変わらず暇さえあれば、白球を追っている。
ゆうくんは、夕方のその時間、パパを待っている。パパは職人さん。亡くなった父親の後を継いで、母親と奥さんの三人で、自宅で仕事をしている。自営だから終わる時間もその日によってまちまちなんだろうが、それでも6時を回ることもあるようだ。パパの仕事が終わり、一段落すると、ゆうくんパパの野球教室が始まる。
どうやら子供用のネットを買ったらしく、キャッチボールをするときや素振りをするときは、それを使っている。暗がりだから姿ははっきり見えないけれど、パパの声はしっかり聞こえる。
「そう。ここはこう振って」
「もう一回」
神妙に聞くゆうくんの顔が思い浮かぶ。

この姿を見ていると、決まって私は亡き父を思い出す。
父は野球選手ではなかったけれど、父親として息子と一緒にキャッチボールをするのが夢だった。けれど、生まれてきたのは二人とも女。かくして彼のささやかな夢は消え去った。
そして、次に抱いた夢は、婿と晩酌を楽しむこと。娘と一緒に飲んでもつまらない。男と男の話しをしたかった…らしい。だが、娘が連れてきた婿は、一人は下戸のおたく野郎。もう一人は口下手の超真面目人間。飲めることは飲めるが、多分5分で話しは尽きてしまうだろう。
果たして、彼の夢はまたまた無残にも消え去ったのだ。そうこうしているうちに、父は鬼籍に入ってしまったから、結局この世で男親としてのほんのささやかな夢をかなえることは出来なかったというわけだ。

となりのパパは、ゆうくんと将来どんな話をするんだろう。
「親父、今日の試合な、」
なんて、話すのだろうか。
ビール飲みながら、ナイター観戦を楽しむのだろうか。
どこにでもあるような、何気ないシーン。けれど我が家には一切なかったシーン。とっても何気ないひとこまなんだけれど、それが家族にとって、案外大切な時間だったりするんだと思う。

私は父にその思いをさせてやれなかった。けれど、何年か後、愚息と主人の会話がどんなものになるのか、今から楽しみにしている。

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