実家の愛猫である「もも」の胸に、大きなしこりを見つけたのが今から約三週間前。いつも抱き上げたりしていたはずなのに、母も姉も私も子供たちも全く気がつかなかった。ピンポン玉よりわずかに小さいそのしこりは、先生の診立てによれば、十中八九乳がんで、しかも猫の場合は9割が悪性だという。大きさから言っても、おそらく転移の可能性は十分にありえるし、もしなかったとしても今後もあまり芳しくない状態が続くかもしれない、ということだった。
「もも」は、今から11年前に私の実家に迷い込んできた、雑種の猫。グレーの体に黒い模様があり、目がまあるくて人懐こいから、猫が大嫌いだった父が、いの一番に「部屋に入れてやれ」と言ったほど。かくしてももは、めでたく我が家の一員となり、あっという間に近所でも有名な猫になった。
「もも、ごはん?」と聞けば、「おあーん」と言うし、「もも」と呼べば必ず返事をする。今はもうそんなことしないけれど、娘がまだベビーカーに乗っていた頃、夕方、子供たちと近くの河原に散歩に行くと、必ず後を付いて来て、土手下で私たちの帰りを待っていた。
姉の教えている教室に、何度となく入り込み、一緒になって生徒と授業を受けている(それは、今でも変わらないけれど)。私が家に帰ろうとすると、必ず門までお見送りをしてくれる。お坊さんがお経をあげてくれると、その傍で神妙になってお経を聞いている。
とにかく人間が好きで、子供が好きで、猫じゃないような猫。それがももなのだ。
だから、今、手術を終えて、傷も大分癒えてきているはずなのに、体力が付いていかないのか、ぐてーッとしているももを見ていると、たまらない気持ちになってくる。もう寿命だよ、といわれても仕方がない年齢なのはわかっているのだけれど、それでも少しでも長生きすることを願って看病している。
今日、術後の消毒をしてもらうために、動物病院に行った。8時半からの受付なのに、待合ロビーは患者(?)でいっぱいだった。「犬猿の仲」と昔から言葉にあるけれど、犬も猫も吠える余裕すらないほど調子が悪いのか、嘘のようにロビーでは皆良い子にしていた。
飼い主は、我が子のように猫を抱き、犬の頭を撫でる。「にゃー」と不安な声をあげれば、安心させようと声をかける。まるで小児科の待合室で、母親が子供に「大丈夫だよ」とあやすように。
ももの前に座っていたワンちゃんは、耳のがんだそうだ。もう、治す方法がないという。
私の横のケージに入った猫ちゃんは、野良猫にやられたそうで、気がついたときは顔中傷だらけだったそうだ。みんな痛い思いをしている。痛いけれど、動物は声を上げることが出来ない。ただただ、痛みを我慢するしかない。動物も、ハードな世界に身をおいてるんだよね。
頑張れ頑張れ。精一杯生きろ。病気になんか負けるな。
せんべい好きである。どっちかと言えば、固目が好き。スーパーに行くと、必ずせんべい売り場に立ち寄る。用がなくとも、立ち寄る。買うわけでもないのに、立ち寄る。ずらりと並んだ棚の上のせんべいを見て、「ふッ…」と一息ついてその場を去ることもある。勿論、財布が許してくれたときは、迷うことなくせんべいを買う。バームクーヘンとどっちが好きかと問われれば勿論バームが好きだけど、せんべいも好き。
で、最近のお気に入りは、ロー○ンの「ひねりぼう」と、亀○の「手塩屋」。ひねりぼうは一人でほぼ一袋空けちゃうし、手塩屋も気づけばあと二、三枚になってることもある。食後のデザートに、ぼりぼり食べる。米のあとに、米の菓子かよ、と突っ込まないように。美味い物は美味いし、せんべい食った後に、ちゃんと甘いものも食うから安心しなさい。我が家のデザートは、隙を生じぬ二段構えなのだよ。飛天の技もびっくりなデザート構成だ。
ついこの間までは、198円だった手塩屋が、今日は168円だったので嬉しい。昨日に引き続き、今日も買っちゃったこの嬉しさを、お届けしたい、あなたにも。
風呂上りに、一枚、食べよう。ばりばり、ぼりぼり。